死に至る病とは絶望の果てに彳む虚無である -2-

随筆

皆がそうでもないだろうが、無食も4・5日になると空腹などどうでもよくなった。苦痛でもない。ただし、空腹を通り越すと妙なものを見ることがある。
それは幻覚か白日夢かよくわからない。どこの国かもわからないが、軍事パレードか演習の場面を何回か見た。戦車やミサイル発射用の車?、武器の運搬車両などなどで、人の姿がなく音もしない。なぜか近未来のものだという確信があった。今考えても、何かを暗示していたわけでもないようだ。訳がわからない、だから幻覚なのかな。

さらに妙なことがあった。口の中から音声が聞こえてくるのだ。もちろん自分の声ではない。そのラジオっぽい音を集中して聞いてみると、視聴したことのあるTV音声だった。「パンチでデート」、確か桂三枝と西川きよしが司会をしていたっけ。なぜこの番組なのかわからない。この現象はもう一度あり、それはニュース番組だった。内容は忘れたが男性アナウンサーの声だった。そしてその時、音源というか発信元に気がついた。右の奥歯が鳴っている。どういうことだ、奥歯が電波を拾って鳴ってるのか? 狂ったような話だが事実である。断じて幻聴ではない。というのも、その頃聴覚は異常に研ぎすまされていて、外を歩く人の足音で何人がどういう並びなのかはっきり解るくらいだったからだ。まぁ、外へ出て確かめたわけではないから、いい加減な話に思われても仕方ない。

そんな日々を重ねていると、水も飲みにくくなった。飲もうとしても何となく気持ち悪くて喉を通らないのだ。山国の水道水で、売ってもよいくらいに旨い水のはずなのに不味く感じてしまう。

なんかもう終わりかなと思った。

コメント

タイトルとURLをコピーしました