七夕

随筆

七夕と言えば天の河、最近は見ていない。
二十年近く前に石垣島の砂浜に寝転んで見上げた星空は、あまりにも星が多く、天の河の存在感が薄くなっていたくらいだ。あれほどではないが、愛知県の西の端あたりにある実家で見た天の河には、十歳の私にとって当たり前であると同時に大宇宙への畏敬の念を抱かせられたものだ。あれから五十年、よほど晴れ上がった日の夜、目の良い者なら、かすれた思い出のようにぼんやりと見えるかもしれない。
子供の頃の私は、アポロ11号による月面着陸成功のこともあり、宇宙に憧れたのはもちろんだが、宇宙って何だろう、解明したいなという思いが強かった。流れ星や七夕の笹の葉に何かを願うタイプではなかった。宇宙の向こう側はどうなっているのかと悩む子供であった。
最近はどれだけの子供らが天の河を見たことがあるのだろう。天の河も織姫彦星も見たことのない子供らは、笹の葉にどんな願いをたくすのだろう。
願いがすべて叶いますように。

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