君の君

見えるだろ

君のために設えた穏やかな川だよ

ほとりには季節の花をあしらっておいた

さぁ舟を作ろう

大きさもスタイルも君におまかせ

いつどこで誰を乗せるのか降ろすのか

いつどこで何を載せるのか下ろすのか

君の思いのまま

港はいくつでもある、疲れたら立ち寄るといい

ああ、私は一緒に行かないよ

なぜって、それは私が君じゃないから

それに、いつでもどこにでもいる私に舟はいらない

君は君のそのまだ小さく頼りなさげな魂とともに舟を進めるのだ

もしも何か困ったときは、岸辺の花にすがってごらん

機嫌がよければ慰めてくれる

でも決して手を貸してくれはしない

なぜって、それは花が君じゃないから

もしも困り果て考え過ぎて魂を見失ってしまったなら、近くの港に寄るといい

きっと友人に出会うから

君の魂を探してくれる友人に

港で君が癒すのは何?

それは君と友人の魂さ

魂はまとめて癒せばより大きく強く育つもの

もちろん君ならできると決まってる

生まれる前から優しい君なのだから

ところで、君はどこへ行くの?

流れにまかせどこまでも?

気に入る港が見つかるまでかい?

ところで、君はなぜ舟に乗ったの

気がついたら乗っていた?

皆そう言うね

それでもいいが、魂に会ってみたかい?

尋ねてみたらよい

私はどこにいるの?

私はどうしてここにいるの?

私って何?

魂は答えてくれる

君が生まれるずっとずっと以前から

君と私は同じものとしてここにいるよ

どこから来たのでもなく、どこかへ行くのでもない

彳んでいるわけでもなく、進むことも退くこともない、そんな世界の真ん中にいる

振り返ってごらんなさい

わかるだろ?

川なんてないんだよ、舟もない

あるのは君の心だけ

いつでもどこにでもある君の心

私は、いつでもどこにでもいる

だから私はいなくてもいい

君は、私

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